データ分析に基づく部活動改革
【テクノロジーを活用した部活動改革】
学習指導要領において、体力・技能の向上のほかにさまざまな学びの場として位置付けられる部活動。特に体育会系部活動は、経済産業省が進めるプロジェクト「未来の教室」実証事業でも分野横断的な学びの場として重要視されている。
一方で、先生方の働き方改革という側面からも、部活動のあり方は模索されている。
そこで、これからの部活動のあり方を探るべく、史上初の高校サッカー3冠を成し遂げたサッカーの強豪校さいたま市立浦和南高等学校のテクノロジーを活用した部活動改革を紹介。
【実施概要】
目的:テクノロジーの力を活用することで部活動の教育効果を最大化する
実施時期:2019年度〜2021年度
実証校:さいたま市立浦和南高等学校
・SPLYZA Teamsの導入
サッカー部、女子バスケットボール部、男子ハンドボール部、女子ハンドボール部に、「SPLYZA Teams(映像版部活ノートツール/弊社提供)」を導入。生徒が自ら練習や試合をスマートフォンなどで録画、コメントを書き加えるなどして動画編集し、自主的に振り返ることができる環境を整える。
・「Ai GROW/IGS株式会社」による調査でビフォー・アフターの教育効果を可視化
「SPLYZA Teams」と部活動の教育効果を調査するため、期間を空けて生徒に「Ai GROW(生徒の資質・能力と教育活動の教育効果を定量化するアセスメント・ツール/IGS社提供)」を受検。サッカーの強豪校「さいたま市立浦和南高等学校」は、テクノロジー活用によるスポーツ事業創発コンソーシアム「Sports-Tech & Business Lab」に高校として全国で唯一の参加校。「ICT導入プロジェクト」では、部活動および「SPLYZA Teams」の効果測定のため、体育会系・文化系部活動に所属する生徒、部活動に所属しない生徒を含めた全校生徒に「Ai GROW」を2度受検(初回:2020年7月〜8月、2回目:2020年11月〜12月)。
【2度の受検結果】
「学力の3要素」の思考力に相当する「論理的思考」の向上。サッカー部、ハンドボール部に加え、他の体育会系部活動でも標準偏差、最小値、中央値が向上。思考力は学力と相関の高い能力が、体育会系部活動でも伸ばせることが確認できた。
▼論理的思考(認知系コンピテンシー)
▼感情コントロール(自己系コンピテンシー)
<主体性>
女子ハンドボール部の生徒は最小値が向上し底上げ。一方で、男子ハンドボール部では平均値、最小値が下がり、最大値がUP。
同じ部活動で異なる成長や変化が確認された場合は、「部活動」というレイヤーより一つ下げて、生徒一人ひとりの受検結果を見て、「特に成長したのは誰なのか?」「練習メニューをどのようにこなしていたか?」などを分析することで、有効な部活動への取り組み方が明らかになっていく。
<協働性>
サッカー部、女子バスケットボール部、その他の体育会系部活動、文化系部活動を含めて大きな向上が見られ、部活動を通して他者と協働する力が養われることが明らかになった。加えて今回のセミナーのテーマでもある「リーダーシップ」も、多くの部活動でかなりポジティブな変化を確認できた。
なお「耐性」「感情コントロール」に関しては多くの部活動で成長していることが確認できた一方、部活動に所属しない生徒は全体的にスコアが下がってしまっており、耐性を高める、感情コントロールを養う、という意味においても部活動が有用に働いていると考えられる。
ハンドボール部には、特に伸ばしたい能力(キー・コンピテンシー)をあらかじめ設定し、キー・コンピテンシーを伸ばすための月1回のPBL(Project-Based Learning)にも取り組んだ。その結果、設定した「思考力」「感情コントロール」が両者ともに伸び、「伸ばしたい能力を事前に決めて対策を行うことで効果的に成長させられる」こと、それが部活動で可能だということが明らかになった。
▼図解:コンピテンシーとは?
【SPLYZA Teams導入の効果】
「SPLYZA Teams」を利用したサッカー部の生徒にコンピテンシー、特に課題設定や創造性、論理的思考、疑う力、主体性(個人的実行力および決断力)などで成長が確認できることから(下がった能力については下がり幅が少ない )コンピテンシーの成長に寄与する可能性が十分に考えられる。
【実施後のコメント】
【”スポーツをサイエンス”3K(経験/勘/根性)からの脱却、データ分析を生かした教育】
さいたま市教育長 細田 眞由美 様
これまでコンピテンシーにおいて数値化することが難しく経験と勘に頼る部分が多かったのですが、データで分析して、エビデンスを明確に提示することで明らかになりました。また、「部活動の意義」について部活動の教育活動についてさまざまな意見がある中で、今回、キーコンピテンシーが部活動を経ることで明確に上昇傾向が得られることが示されました。
勝つためだけの部活動ではなく、子ども達が本来持っているのばしたい力を伸ばすことに明確に寄与できると示してくれたので心強く思います。今後は、我々が今の教育活動をどう進化させていくかが重要と考えます。
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【浦和南高校のキャッチフレーズ『文武自考』】
さいたま市立浦和南高等学校 校長 上原一孝
浦和南のキャッチフレーズで文武自考というものがあります。「勉強も部活動も自ら考えて行動してほしい」。「SPLYZA Teams」を導入することによって、今まで指導者の指示待ちだった生徒が自ら考えるということが定着してきたと感じています。
この力は社会人になっても絶対に必要になってくるものだと思いますので、勉強だけでなく部活動でも体現してもらえればと思います。
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【数値では見えない変化の大きさがある】
さいたま市立浦和南高等学校 サッカー部顧問 松本 隆康先生
私ども顧問の作業負担軽減効果があり、選手の戦術理解度への効果は極めて大きく、ミーティングの質が効率化かつ深まったと感じています。
今後も継続的に活用していく中で、生徒たちへの新しい刺激を模索しながら活用していこうと思っています。SPLYZA Teamsの進化に期待しています。
【最後に】
スポーツは正解のない問題。それを解いていくプロセスには、社会に出てから生き抜くために必要な力が含まれていると考えている。
弊社は、今後もスポーツの上達に加え、スポーツを通じて正解のない問題を考える力が身に付くようなサービスを生み出し、スポーツの教育的価値の創出を目指す。