サッカー選手に必要な要素として最も多く要求されるものが、パスやシュートなどのキックに関するスキルであったり、ボールを扱う技術といったテクニック面に関するものです。他にもコミュニケーション能力やリーダーシップなどのメンタル要素、瞬発力(スピード)や俊敏性(アジリティ)といったフィジカル要素などがあります。
当サイト内にて提供している「女子サッカー選手診断」のWebアプリにおいては、そのようなサッカー選手に求められる要素を「プレースタイル」として再定義し、以下に挙げている20の項目としてリストアップしています。
そしてこのページでは、定義されているそれぞれのプレースタイルの用語を解説しています。サッカーに関する座学としてもご活用ください。なおチームや個人によっては、こちらで解説するそれぞれの用語の定義が異なる場合もありますので、あくまでも参考程度にしていただければと思います。
▷オフェンスアクション
・ストライカー
・ワンタッチゴーラー
・ラインブレイク(抜け出し)
・逆足カットイン
・サイドからのオーバーラップ
・ポストプレー&ボールキープ
・コンビネーションプレー
・ゴール前でのチャンスメイク
・中盤でのゲームメイク
・自陣からのビルドアップ
・ドリブル突破
・クロスボール
・ロングフィード
▷ディフェンスアクション
・デュエル(1対1)
・タックル(スライディング)
・インターセプト
・カバーリング(守備サポート)
▷GK固有アクション
・シュートセービング
▷その他
・フリーロール
・フォアザチーム
ゴール前でボールを受けたら必ずシュートで終わるような「シュート意識の高い選手」を指し示すプレースタイルです。選手の個人能力(決定力の高さなど)を活かした攻撃を展開するチームも多いため、その能力を最大限に活かすために、チーム全体で該当する選手にボールを集める意識が高まるのも特徴です。シュートのバリエーションも多彩であることが求められます。
「BOX型ストライカー」と呼ばれる、ペナルティボックス内で仕事をするタイプの点取り屋のプレースタイルです。特徴としては、ドリブルやパスなどで局面を打開するというよりも、相手ディフェンダーとの駆け引きや、ゴール前での動きでギャップを作って、味方のラストパスに対してヘディングを含めたワンタッチでゴールを決めることが多いというものです。古典的でベーシックなスタイルではありますが、現代のサッカーにおいても非常に重宝されるスタイルで、「ゴールの嗅覚が鋭い」と言われるストライカーの大半はこれに当てはまります。
相手ディフェンスラインと駆け引きをし、ライン裏のスペースへ抜け出すプレースタイルです。そのプレーヤーの動きにあわせて味方がスルーパスなどを供給する必要があるため、相手との駆け引き以上に味方との連携力の高さが求められます。単純なスプリント能力(脚の速さ)もさることながら、抜け出したあとのチャンスメイクやフィニッシュワークなど、多くの決定的なタスクをこなすことを要求されるスタイルでもあります。
ウイングもしくはサイドハーフの選手が、逆足(左サイドの場合は右足、左サイドの場合は右足)を用いながら縦ではなく横もしくは斜め方向にドリブルし、よりゴールに近づいていくプレースタイルを指します。カットインしたあとはコントロールカーブでのシュートや、浮き玉のスルーパス、加えて味方とのワンタッチパスなどのコンビネーションプレーでの抜け出しなど、手数が多ければ多いほど相手守備陣を混乱に陥れることができます。但し、縦の突破が選択肢として無い場合、相手にコースを切られてしまい、サイドからの攻撃自体が停滞してしまうという状況も想定されます。
主にサイドバックの選手が同サイドの味方の選手を追い越し、ドリブル突破やクロスボールを供給するというプレースタイルになります。また味方の外側ではなく、よりゴールに近い内側からオーバーラップする「インナーラップ」から、マイナス方向へグラウンダーのクロスを上げる「プルバック」というスタイルもあります。縦関係にあるチームメイトとの連携が重要であり、チームとしてサイド攻撃を主体にしている場合はサイドバックがひたすらタッチライン付近を上下動することになります。
該当するプレーヤーが楔(くさび)となり、相手のマークを背中で受け、ゴールに背を向けた状態で味方にパスを戻したり、そこからサイドに展開するようなプレースタイルを指します。ボール回しのリズムを作るためや、なかなかボールに触れないFWが本来の持ち場を離れて、中盤まで降りてきてポストプレーを行うこともありますが、基本的には敵の敷く守備ブロックの間でポストプレーヤーがボールを受けることで、相手の組織的な守備にギャップを生じさせるのが狙いとなります。
複数人で行うワンタッチパスやワンツー(パス&ゴー)など、選手間のコンビネーションを活かしたプレースタイルです。狭いエリアでかつ即興性の高いプレーであるが故に、選手同士の阿吽の呼吸が求められるのに加え、特にバイタルエリアで行われることも多いため、うまくいけばビッグチャンスを創出できますが、人数をかければかけるほど上手くいかなかった場合にロングカウンターを受けやすくなるという面もあります。我らがサッカー日本代表が古(いにしえ)より多様しまくっているスタイルでもあります。
該当する選手がビッグチャンスを創出するプレーに積極的にチャレンジしようとするプレースタイルです。パスやドリブル突破など、さまざまな形で得点に貢献します。セカンドストライカーやトップ下、オフェンシブハーフの選手などがその役割の多くを担っています。現代サッカーにおける通説として、「ペナルティエリア内からのラストパスが最もゴールを演出している」とされているため、BOX内での高パフォーマンス、ラストパスのクオリティで違いを作れる選手こそがチームのキープレイヤーであるということは間違いないでしょう。
中盤にいるプレイヤーが司令塔としてボールをさばき、前線やスペースを狙った多彩なパスでチャンスを演出するスタイルです。具体的には前線に運ぶドリブルであったり、ワンタッチで繰り広げられる複数人でのコンビネーションプレー、他にもショートパスやロングパスを織り混ぜ、チームのオフェンスをより活性化させる役割などがあります。中盤でのゲームメイクを担うプレーヤーはチーム内でもサッカー選手としての総合的な能力が高い傾向にあり、チャンスの起点となるパスなど、いわゆる「キーパス」を出す役回りであることも多いです。
現代サッカーにおいて必修となりつつある、ゴールキーパーも含めた後方のポジションを担当する選手間での、自陣からのパスワークのことを指します。相手が試合を通して高い位置からプレッシングをしてくるという条件下において、パスワークにGKを加えることで数的優位の状況をつくり、相手のプレッシングを剥がすことでスムーズにオフェンスに移行し、擬似カウンターアタックのような状況を生み出すことができます。それとはまた別に、GKやDFの選手がパススキルが高い場合、相手はプレッシングを諦めざるを得ないという状況を作ることも。中盤の選手がビルドアップのサポートに入る必要も出てくるため、そのあたりのチーム内での決まり事は日頃のトレーニング時から確認しておく必要があります。
ボールを運ぶドリブルなどもありますが、ここでは敵陣の深い位置で相手を抜き去るドリブルのことを指しています。カウンター時にスピードに乗ってドリブルで抜き去るものから、相手が完全に守備組織を構築した状況下において、ボール保持者が止まった状態から緩急やテクニックで抜き去るものまであり、こと後者に置いては主にウイングの選手がその役割を担うことが多いです。世界的にみてもこのようなドリブラーは希少価値が高く、特にブラジル出身の選手にこの役割における歴代の名手(クラッキ)が集中しています。
サイドからの攻撃でゴール前に供給されるラストパスのことを指します。一昔前までは「センタリング」という呼称もありましたが、現在はこの「クロス(ボール)」で統一されていることが多いです。放たれる位置によってはアーリークロス(ゴールから離れた位置)、プルバック(ゴールポスト付近の深い位置からのマイナスクロス)といったように呼び方が変わったり、カットインして逆足から放たれるインカーブでの浮き玉のクロスボール、味方が合わせやすいグラウンダーのクロスなど、バリエーションは豊富です。なお、サイド攻撃からゴールが決まる確率はプロの場合でも2%前後とされているため、執拗にクロスボールだけを繰り返すだけでなく、他に多くの攻撃オプションがあるとなお良いでしょう。
主にフィールドの後方から供給される長い距離のパスで、ゴールキーパーやディフェンダー、中盤だとアンカーやボランチなどがロングフィード役を担います。単純な裏抜けを狙う縦方向のロングフィードもあれば、逆サイドの味方に対角線に放たれる正確なフィードもあり、いずれも高いキック精度が要求されます。またロングフィードの弾道は山なりではなく、低弾道でかつバックスピンがかかっていて受け手がコントロールしやすい球質であったり、アウトカーブをかけて相手ディフェンスが対応できないものなど、バリエーション豊富なキックを蹴り分ける技術は必須となります。
主に1対1での体のぶつかり合いを得意とするプレースタイルです。ここでの「デュエル」とは地上戦、空中戦の両方が該当し、イーブンボールもしくは相手がボールを保持している際、または自らがボールを保持している際に発生する球際でのフィジカル勝負において、当たり負けしない屈強な筋力・ボディバランス(体幹)が必要とされます。
ドリブルなどでボールを保持している相手に対し、スライディングでボールを刈り取るのを得意とするプレースタイルです。タックルはボールを奪ったり相手のドリブルを止めるだけでなく、シュートをブロックしたり、シュートコースを限定したりする用途もあります。またインターセプト(パスコースに入ってボールをカットする)にも使われますが、タックルが空振りすることによって大ピンチを招いたり、少し遅くなるだけで危険なファウルとなり、相手に怪我をさせてしまうリスクも伴います。
相手のパスコースに入ってボールをカットする、フィジカルコンタクトの発生しないディフェンスの動きのことを指します。守備者としての読みの巧さも必要ですが、何より味方同士の守備連動(カバーリングなど)によりインターセプトの頻度はより高く、正確性を高めることが可能になります。具体的な守備連動の動きとして、守備者1人がボールホルダーにディレイをかけつつ、相手のパスミスを誘発するような、複数人で連動してインターセプトを狙うという動き方などがあります。
守備者の1人がボール保持者にアプローチをかけ、その近くの味方選手がフォローに入るようにするスタイルです。ディフェンスは明確にボールを奪いにいくというよりも、相手の選択肢(パスやドリブルなど)を減らすことを前提としており、相手の攻撃を遅らせつつ組織的な守備で対応するようなイメージです。またディフェンダー同士の連動した動きにより、空いたスペースを埋めることができるのも特徴です。但し守備連動がうまくいかないと相手にギャップを突かれてしまうこともあるので、洗練されたオーガナイズドディフェンスの構築が要求されます。
ゴールキーパーの本来の役割である「シュートセービング」をより得意とする選手のスタイルを指します。セービングの中にはキャッチングやディフレクティング、ブロッキングといった細かい技術的な要素もありますが、今回はあくまで「YouTube上のプレー集で確認できるもの」という括りがあるため、大きな要素としての「シュートセービング」をプレースタイルの項目として定義しています。
主にオフェンスの局面において自由を与えられている選手を指すプレースタイルです。ゴール前でのチャンスの場面において「単独でドリブルで切り込んでシュートを打つか」もしくは「味方とのパス交換でチャンスを演出するか」などは、自由を与えられているプレーヤーの判断次第となり、その選手の存在およびプレーのクオリティが試合結果を大きく動かすような場合も多くなります。守備のタスクを免除されていることも多く、「ゴール前でのチャンスメイク」を担う選手に与えられている特権とも言えます。
プレーヤーの献身的な姿勢によって、チーム全体の士気を上げるプレースタイルを指します。オフェンシブな選手の場合は前線でのフォアチェックやチェイシングを効果的・継続的に行える選手であったり、ディフェンシブな選手の場合は、豊富な運動量でピッチ上の広いエリアをカバーしたり、相手にカウンターアタックを受けても手を抜かずにプレスバックしたりするプレーを普段から行えるプレーヤーを指します。現代サッカーにおいてはサッカー選手のアスリート化が顕著となっているため、フォアザチームのメンタリティを持つ選手はより重宝されると言えるでしょう。